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dotsのディレクター、桑折現がドイツの強制収容所(KZ)に訪れた体験を元に、そこで感じた歴史との圧倒的な距離と断絶、異物としてそこにある自分の強烈な生の感覚、それらを手がかりに制作した作品。
白く薄い板状の物質がレンガ状に組み立てられた壁。空間に響き渡るどこからかの記憶の声。
時代・場所を超えた様々な風景の映像。
6人のパフォーマーの匿名的な身体は、「記録された歴史」を背負いながらも、そこから逃れるように全速力で自分の身体へと向かい合う。
2004 年夏、ドイツ、ハンブルグ郊外にあるノイエンガンメ強制収容所跡を訪れた。
そこは大きな体育館くらいの広さでいくつかの小さな天窓から夕刻の光が薄暗く空間を照らしていた。
がらんとした、何も無いと言ってもいいくらいの空間だった。
雑なデコボコしたコンクリートの床を歩くごとに足音が小さく響いていた。
その過酷な経験と時間を持ったその場所は、自分自身の今という現実を異物として生々しく浮かび上がらせてきたように感じ、そして、その空間が抱えた歴史と現実の感覚とを行ったり来たりしながら、長い時間、ぽつんとその空間と対峙していた。
今思えば、去年の夏にドイツ・ノイエンガンメ強制収容所に訪れた時から、[KZ]という幽霊に取り憑かれているのではないかと感じています。その幽霊に突き動かされここまで来たのではないかと。
再現の不可能性。叙述的には語り得ないこと。
そのようにしてしか向かい合うことを許さない[KZ]に対して、必死に接触点を探してきました。
このどこまでも深い闇に対して手を伸ばし、飲み込まれ、あがいて、そこから得た感触の「集積」。
このパフォーマンスはそのようなものとして存在しようとしているかもしれません。
望むならその接触点が、今を生きる私たちに対し、リアリティを持った接触点として観客の身体に立ち現われてくればと思います。
(公演パンフレットより抜粋)